ゼロからの情報システム

  現代社会の情報インフラの仕組みをゼロから学べます.

必要条件

情報社会に生きるアナタ.
自動車社会で自動車や高速道路や宅配便のこと知らないで生きていけますか.
情報社会では,スマホやパソコンやインターネットやウェブが,自動車や高速道路や宅配便に相当します.
このサイトは,パソコン使いのパソコン知らず,を対象に情報社会の基盤技術を説明します.

3.28 必要条件4:プログラムと情報を意欲的に有効活用できること

最後の必要条件は,開発するプログラムを適切に利用し,処理結果を上手に活用する能力意欲を,あなたが持っていることです.これはあなた(あるいはソフトウェアの利用者)自身の問題です.

これには,パソコンやソフトウェアを利用する能力,いわゆるコンピュータリテラシと,データから有効な意味合いを読みとって的確な判断をする能力,つまり,情報リテラシの両方が関わります.

本書はコンピュータリテラシの基盤的知識の提供を主たる目的としています.じっくり本書で学習した皆さんは,コンピュータリテラシの基礎を身につけていると信じます.

情報リテラシは,結局,学校での勉強を良くし,さまざまな経験を積むことで,高めることができるでしょう.突き詰めて考えると,これは問題解決能力と同義と言って良いと思われます.問題解決能力について,最近は人間力という表現も使われます.

実は,第1から第3の必要条件が満たされるかどうかは,情報リテラシの高さによって大きな影響を受けます.組織的な仕事なら組織の,個人的な仕事なら個人の,問題解決能力の高いことがパソコンの利用を進めるには不可欠のことなのです.

なにせ,パソコンは「知的能力の増幅装置」GUIを開発したケイの言葉)でしかないのです.しかし,知的能力を増幅できるパソコンを有効に利用するなら,あなたの能力が何倍にもなります.

情報化社会(ユビキタス社会)では,パソコンを中心とする情報システムを使えるか使えないかは,競争力の大きな差を生みます.現代に生きる個人にとっても組織にとっても,パソコンを知ること,もう少し一般的な表現をすれば,情報システムの仕組みと活用方法を理解することは,極めて重要なことです.

必要条件のどれかが満たされないからといって諦めることはありません.仕事は,工夫すればもっと小さないくつかの仕事に分割できることが多いからからです.

 分割して出来る,より小さな仕事であれば,4つの必要条件を満たすかも知れません.しかも,分割の仕方は1つとは限りません.分割を工夫すれば,たいがいの仕事は,少なくとも部分的にはパソコン化が可能です.工夫次第で,パソコンの効果的な使い方が発見できるものです.

3.27 必要条件3:十分に正確なデータをタイムリーに獲得できる

第3の必要条件は,利用するデータの値を,実務の中で十分に正確に,かつ,適時に(タイムリーに)獲得できることです.

データを獲得するには,なんらかの時間と費用が掛かります.データを買う場合にはもちろんですが,買わなくとも時間や費用は掛かるのです.

例えば,顧客の名簿を作りたいとします.一般に,顧客に関するデータは,日々,少しづつ変化します.その変化を把握しようとすれば,営業担当者からの情報や,顧客からの案内状や,あるいは,名刺の整理をしなければなりません.

この時間と費用は,データの正確さを高めようとすればするほど,一般的に長く,高くなります.精密にデータの値を知ろうとすると,正確な作業をする必要があり,しかも,より長い時間がかかるものです.

長い時間を掛ける費用をまかなうことができたとしても,時間を掛け過ぎれば,判断が有効な時期を失ってしまう可能性が高くなります

パソコンで処理するとしても,処理結果を利用する意義が無くなってしまってからしか,十分に正確なデータを獲得できないのであれば,パソコンは利用できないのと同じことです.

例えば,試験前の授業を欠席してしまい,期末試験の出題範囲を試験が終わってから聞くようなものです.

注意深いあなたなら,期末試験の直前の,出題範囲の説明がありそうな授業を欠席するようなヘマは絶対にしなかったはずです.

でも,ビジネスの世界では良くあることです.

大企業の多くは,決算を年間に一度かせいぜい数度しかできませんでした.四半期に一度であれば,今発見した財務上の課題への正確な対応策は3ヶ月経たないと作れないことになります.課題の原因を知るためには,課題が発生した時の会社の財務状況を分析しなければならないのですが,そのためのデータが揃うのは3ヶ月後だからです.

これでは変化の早いグローバルな経営環境に競争力を発揮することが難しくなります.そこで近年,多くの大企業では情報ネットワークと情報システムを整備して,2週間とか極端な場合1日で,会社の状況が判るように改善しました.

 必要なデータが十分正確に,適時に獲得できれば,それをパソコンで処理して高い成果を挙げることができる可能性が出てきます

3.26 必要条件2:欲しいデータの元になるデータの種類と値が判る

必要条件の第2は,欲しいデータを生成するのに使えるデータの種類,各種データの値あるいは値の範囲を具体的に限定できることです.

これができるということは,使えるデータから欲しいデータを生成するための手順が,あるていど判ることを意味します.さもなければ「使えるデータだ」と判断できるはずがありませんから.

処理対象とするデータの多くは,私たちの行動の場面で発生します.それを頭の中に蓄積し,状況に応じて処理をして判断するので,臨機応変に仕事ができます.

ところが,私たちは経験を積むと,状況に直面して習慣的に処理することで,的確な対応ができるようになります.そのため,どのデータをどのように利用しているのかを,自覚してないことも多いのです.

しかし,パソコンでデータ処理をしようとする時には,それを他人にも判る形で記述しなければなりません.

どのデータを処理して欲しいデータを作るのかが判るだけでは,まだ,プログラムを開発することができません.プログラムを作るためには,各データがどのような値(数値,文字,文章,図形など)を取り,その値はどの範囲で変動するかも判らなければなりません.

単なる文字を何個か処理するのか,ある程度長い文章を処理しなければならないのかによって,プログラムは大きく異なったものになります.数値の場合でも,小数点が付くのか付かないのか,2桁なのか8桁なのか,計算するのかそれとも大小の判定をするだけなのか,などによってプログラムは変わります.

どのような値を持つ,どんな範囲のデータを処理して,どのようなデータを生成するのかが判ると,そのためにはどのような処理をしなければならないのかを検討できるようになります.

これは普通,情報処理の素人には,なかなか難しい作業になります.

あなたの仕事が必要なデータの種類と値・範囲,そして処理手順を持つという,この第2の必要条件を満たすことが独力では確認できなくても,諦める必要はありません.それは,そのための専門家がいるからです.

 意思決定の技術者がそれです.経営科学経営工学オペレーションズ リサーチ情報分析などの専門家はそのような人たちです.これらの専門家の支援を受けることが可能です.

3.24 仕事がパソコンでできるための4つの必要条件

ソフトウェアに備わる高い機能が,パソコンを強力な道具にしています.仕事にパソコンや情報システムを導入するということは,アプリケーションとの対話を通して仕事を進められるように,仕事の仕方を変えることです.言い換えれば,仕事のデータ処理の部分を処理できるアプリケーションを導入するということです.

アプリケーションとの対話は,ディスプレイに表示される伝票や文書を通して行います.つまり,文書処理ソフトウェアの基本機能は,実は,仕事上でパソコンを利用する時に必要になる機能にも通じるのです.

パソコンにできることは,処理の手順を厳密に作ることができるデータ処理に限られます.どれかの表現様式で記述してデータとして扱うことができない情報は,パソコンでは処理できず,人間が処理するしかありません.

この絶対条件を理解した上で,ある仕事にパソコンが利用できるかどうかの判断をできるようになるのが,本項と引き続く4つの項での目標です.

 

処理の手順を厳密に作ることが必要なのは,パソコンがソフトウェア(プログラム)によって動くからです.プログラムを作るには,厳密な処理手順,一般的にはアルゴリズムといいます,が必要です.

本書ではプログラムの作り方には踏み込みませんので,アルゴリズムの作り方は話題にしません.しかし,プログラムの作成が可能な程度に厳密な処理手順を(専門の技術者が)発見できるための必要条件を満たすかどうかを検討することは,技術を知らなくてもできることです.

ここで単に「条件」と言わず「必要条件」としたのは,原理的には可能であっても,実際に処理手順を発見することが非常に難しくて,専門技術者にも容易ではないという場合があるからです.そういう難しい処理に対するアルゴリズムを開発するのは,計算科学の目標の1つです.

重要な4つの必要条件を表4に示しました.ある仕事にパソコンを導入して改革や改善が可能かどうかを判断するには,これらの4条件を満たしているかどうかを検証すればよいのです.

4 パソコン活用が可能な仕事の4つの必要条件

          欲しい処理結果の指定

          対象データの範囲と各データの値の特定

          データの正確で適時な獲得

          十分なコンピュータリテラシと情報リテラシ

プロフィール

ヤッキー

カテゴリ別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ