1.28に述べたことから分かるのは,CPUにとって記憶(しているデータ)はきわめて重要な財産だ,ということです.そして,賢く見せるためには,記憶装置から必要なデータを検索して取り出したり,計算したりすることが超高速にできなければなりません.
ところが,記憶装置は,読み書きのスピードと記憶容量の大きさとが,トレードオフの関係にあります.トレードオフの関係とは,一方にとって都合が良ければ,他方にとっては不都合になる関係を言います.なお,記憶容量とはある記憶装置が記憶できる最大のデータ量を言います.
パソコンや周辺装置の中で,もっとも高い処理速度を持っているのはCPUです.CPUは高価ですから,その高い処理速度を効果的に活用しなければなりません.
そのためにはプログラムやデータの読み書きのスピードがもっとも重要です.記憶装置から指示や必要なデータを受けとって処理をし,その結果をまた記憶装置に書き込む(つまり,イマコする)のが,CPUのデータ処理の基本だからです.
その時に使う記憶装置が主記憶装置ですから,主記憶装置には読み書きのスピードが最も速い記憶装置であるRAMを使います.
最近は主記憶装置の容量を,従来に比べると極めて大きくできるようになりました.そのためRAMの製造費を下げるためにスピードを犠牲にする傾向があります.
その代わりにCPUと主記憶装置の間にキャッシュメモリと呼ばれるより高速のRAMを置きます.ただし,高速にするためにキャッシュメモリの容量は主記憶装置にくらべて大幅に小さくなります.
キャッシュメモリはCPUのダイ(1.5参照)に一体化して製造されることが多くなっています.容量的には数MB,つまり,数百万バイト程度です.おおざっぱに言えば,主記憶装置の1000分の1程度の容量です.読み出し,書き込みの速度はCPUの内部クロックと同程度で,極めて高速です.