ソフトウェアに備わる高い機能が,パソコンを強力な道具にしています.仕事にパソコンや情報システムを導入するということは,アプリケーションとの対話を通して仕事を進められるように,仕事の仕方を変えることです.言い換えれば,仕事のデータ処理の部分を処理できるアプリケーションを導入するということです.

アプリケーションとの対話は,ディスプレイに表示される伝票や文書を通して行います.つまり,文書処理ソフトウェアの基本機能は,実は,仕事上でパソコンを利用する時に必要になる機能にも通じるのです.

パソコンにできることは,処理の手順を厳密に作ることができるデータ処理に限られます.どれかの表現様式で記述してデータとして扱うことができない情報は,パソコンでは処理できず,人間が処理するしかありません.

この絶対条件を理解した上で,ある仕事にパソコンが利用できるかどうかの判断をできるようになるのが,本項と引き続く4つの項での目標です.

 

処理の手順を厳密に作ることが必要なのは,パソコンがソフトウェア(プログラム)によって動くからです.プログラムを作るには,厳密な処理手順,一般的にはアルゴリズムといいます,が必要です.

本書ではプログラムの作り方には踏み込みませんので,アルゴリズムの作り方は話題にしません.しかし,プログラムの作成が可能な程度に厳密な処理手順を(専門の技術者が)発見できるための必要条件を満たすかどうかを検討することは,技術を知らなくてもできることです.

ここで単に「条件」と言わず「必要条件」としたのは,原理的には可能であっても,実際に処理手順を発見することが非常に難しくて,専門技術者にも容易ではないという場合があるからです.そういう難しい処理に対するアルゴリズムを開発するのは,計算科学の目標の1つです.

重要な4つの必要条件を表4に示しました.ある仕事にパソコンを導入して改革や改善が可能かどうかを判断するには,これらの4条件を満たしているかどうかを検証すればよいのです.

4 パソコン活用が可能な仕事の4つの必要条件

          欲しい処理結果の指定

          対象データの範囲と各データの値の特定

          データの正確で適時な獲得

          十分なコンピュータリテラシと情報リテラシ