入力済みの文書に変更を加える前項に述べたような作業は,RAMにすでに記憶してあるデータを書き換えるものです.

ところが,空白のところに新しくデータを入力するのと,すでに有るデータを書き換えるのでは,CPUが行う処理内容が異なります.

編集作業の種類によって処理の内容が異なるのですから,作業に応じてプログラムを切り替えることが必要になります.その切り替えをCPUに指示するために,修正する範囲を選択したり,メニューから適当な編集作業を選択するなどするのです.

こうしてプログラムの切り替えができてしまえば,何しろ私たちの作業スピードに比べれば,CPUのスピードは圧倒的ですから,いかにもディスプレイの文字に作業したように感るように,データ処理することができるのです.

例えば,1つの段落を選択し,「編集」メニューの「コピー」を選択します.(あるいは,Ctrl+Cを押します.)すると,CPUは選択した範囲をクリップボードと呼ばれるRAMの特定の位置に書き込みます.

次に,カーソルを望みの位置に移動して,「編集」メニューの「張り付け」を選択します.(あるいは,Ctrl+Vを押します.)すると,選択した段落がその位置に複写されます.

これはプログラムの中で,次のような手順で実現されています.

CPUは,選択された範囲の文字数に合わせて,移動した先のカーソル位置から以降のRAMに記憶された文字データを後に移動します.

これには最後の文字データから必要文字数分だけ後に移動することを繰り返します.それが終わると,最後に移動した文字のあったRAMの場所から始めて,順に,クリップボードの文字データを先頭から順に移動します.

この作業は,CPUのスピードをもってすれば,目にも止まらぬ速さで終わってしまいます.

その上で,今表示している範囲の(変更済みの)データをVRAMに書き込むのです.毎秒60回程度ディスプレイは表示をし直していますから,すぐに表示内容の変化となって反映されるというわけです.

CPUはこうした処理をワープロのプログラムからの指示によって行います.プログラムでこのような処理をするためには,厳密な手順を作り上げることが必要ですが,それは技術者に任せましょう.

 私たち利用者は,そういう厳密な手順を行うプログラムがあって,それによって上記のような処理が行われていること,それが入力作業と表示作業の独立性を利用したものだということを理解すれば十分です.