CPURAMは,電源をオフしたあとは,まったくきれいに,すべてを忘れるように作られています.

ですから,次に電源をオンしたときに,最初の指示をCPUがどこか特定のところから自動的に受けとるようにしなければ,CPUはデータ処理を開始することが出来ません.

幸いにして,指示を受けとるというのも(CPUにとっては)データ処理の一種です.しかも,CPUに記憶装置の決まった場所にあるプログラムを受けとらせるためのプログラムは,実際に作ってみると小さなものです.7-8個ほどの指示で十分なのです.

それで,この小さなプログラムをRAMに手で入力し,これをCPUに実行させることで,自律的に大きなプログラムを受けとらせる,という便利な方法が発明されました.これをブートストラッピングといいます.

足のくるぶしを包むような丈の高い皮靴には,靴ひもの下のところに「つまみ皮」(これをブートストラップといいます)があります.この先端をつかんで手元に引っぱり出す時のイモヅル式の様子と,CPUが小さなものから大きなものへと次第にエスカレートさせながら,プログラムを受けとる様子が似ているので,このような呼称が使われています.

ブートストラッピングは,電源オフで真っ白になったCPURAMの記憶を回復する処理です.

ブートストラッピングが発明された初期のころは,最初の小さなプログラムを入力するのは手作業でした.しかし,パソコンが発明された時期には,もう自動的にブートストラッピングさせる仕組みが発明されていました.その内容は1.18から説明します.