ゼロからの情報システム

  現代社会の情報インフラの仕組みをゼロから学べます.

情報社会に生きるアナタ.
自動車社会で自動車や高速道路や宅配便のこと知らないで生きていけますか.
情報社会では,スマホやパソコンやインターネットやウェブが,自動車や高速道路や宅配便に相当します.
このサイトは,パソコン使いのパソコン知らず,を対象に情報社会の基盤技術を説明します.

3.25 必要条件1:どのようなデータが欲しいのかを明確にできること

第1の必要条件は,どのようなデータがあれば,仕事の遂行に役立ち,仕事のスピードを上げたり,効果を高めたり,あるいは,成果を大きくできるのかが,判ることです.

パソコンはデータ処理をします.データはどのようにパソコンで処理しても,その結果はやはりデータです.データから価値ある情報を読みとるのは,利用者の仕事です(3.28参照).

要は,価値ある情報を読みとるのに,どのようなデータが欲しいのかを明確にできなければ,パソコンで処理するためのプログラムを開発することはできないということです.

これはなかなか難しいことです.なぜかというと,そのためには,あなたが欲しい情報を,明確にしなければならないからです.

本書では,パソコンの利用とはパソコンとの対話だということを強調してきました.効果的な対話をするためには,「何のために」を明確にする必要があります.処理した結果のデータから読みとりたい情報を明らかにすることは,まさに「何のために」を知ることです.

この必要条件を満たすためには,あなたの会社がどのような状況にあり,会社のビジネス環境や技術環境がどうなっているか,そして,あなたの任務は,何のために,何を,どうすることなのかを,整理しなければなりません.

言い換えれば,あなたが担当する仕事を整理して,なおかつ,そのためにどのような経営資源をどの程度まで使って良いのかを,知らなければなりません.

これは,専門の言葉で言えば,担当する仕事の上で解決・改善しなければならない問題状況をモデル化するということです.

モデル化とは問題を整理して記述することです.問題を具体的に,判りやすく整理するということは,良い答えに近づくことです.

例えば,中学生の数学では連立方程式を学びます.連立方程式を解く方法は,答えが自明になるように連立方程式を変形する方法です.ただ問題の記述の仕方を変えているだけなのです.

モデル化は,パソコンを使わない場合でも必要なことですが,多くの場合,私たちは自覚のないまま,あるいは,漠然とした感じを頼りに,経験的・習慣的に任務をこなしているのが実態です.ですから,仕事の内容ややり方をあらためて訊かれると,返事に困ることも多いのです.

整理しなくても何とかやってこれたとしても,整理は必要ないということを意味するわけではありません.一般に,仕事の内容を良く分析すれば,果たすべき任務とそれに役立つ情報,そして,そのような情報を読みとるのに適したデータを発見することできるものです.

なぜなら,連立方程式の例が示すように,良く述べられた問題は答えに近づいているものだからです.

このような分析を独力で行うのは,なかなか難しいものです.私たちは自分の置かれた状況を,私的な面はもちろん,公的な面でも,直感的に把握するだけで事足りることが多いからです.経験が不足しています.

 しかし,ビジネス分析の専門知識がすでに相当程度に蓄積されており,それを専門とする技術者も育てられています.そうした知識や技術者の支援のもとでなら,難しくないはずです.

3.24 仕事がパソコンでできるための4つの必要条件

ソフトウェアに備わる高い機能が,パソコンを強力な道具にしています.仕事にパソコンや情報システムを導入するということは,アプリケーションとの対話を通して仕事を進められるように,仕事の仕方を変えることです.言い換えれば,仕事のデータ処理の部分を処理できるアプリケーションを導入するということです.

アプリケーションとの対話は,ディスプレイに表示される伝票や文書を通して行います.つまり,文書処理ソフトウェアの基本機能は,実は,仕事上でパソコンを利用する時に必要になる機能にも通じるのです.

パソコンにできることは,処理の手順を厳密に作ることができるデータ処理に限られます.どれかの表現様式で記述してデータとして扱うことができない情報は,パソコンでは処理できず,人間が処理するしかありません.

この絶対条件を理解した上で,ある仕事にパソコンが利用できるかどうかの判断をできるようになるのが,本項と引き続く4つの項での目標です.

 

処理の手順を厳密に作ることが必要なのは,パソコンがソフトウェア(プログラム)によって動くからです.プログラムを作るには,厳密な処理手順,一般的にはアルゴリズムといいます,が必要です.

本書ではプログラムの作り方には踏み込みませんので,アルゴリズムの作り方は話題にしません.しかし,プログラムの作成が可能な程度に厳密な処理手順を(専門の技術者が)発見できるための必要条件を満たすかどうかを検討することは,技術を知らなくてもできることです.

ここで単に「条件」と言わず「必要条件」としたのは,原理的には可能であっても,実際に処理手順を発見することが非常に難しくて,専門技術者にも容易ではないという場合があるからです.そういう難しい処理に対するアルゴリズムを開発するのは,計算科学の目標の1つです.

重要な4つの必要条件を表4に示しました.ある仕事にパソコンを導入して改革や改善が可能かどうかを判断するには,これらの4条件を満たしているかどうかを検証すればよいのです.

4 パソコン活用が可能な仕事の4つの必要条件

          欲しい処理結果の指定

          対象データの範囲と各データの値の特定

          データの正確で適時な獲得

          十分なコンピュータリテラシと情報リテラシ

3.23 表計算ソフトの再計算機能も独立性を利用しています

入力作業と表示作業の独立性の発見は,表計算ソフトの秘密を理解するのにも大いに役立ちます.

表計算ソフトのすごいところは,表の1カ所の値を書き換えると,その値が影響を与えるすべての欄(セル)の値を計算し直して,いつも,全体として矛盾のないようにしてくれることです.

自分で計算のやり直しをしないで済むのですから,初めて体験した時は,ひどく感動しました.皆さんはどうでしょうか.

これは表計算ソフトの再計算機能と呼ばれています.どこかの値を修正すると,関係するセルの値を計算し直すからです.

どんな手順でこういうことを実現したのか,は技術者の領分ですから私たちは立ち入りません.しかし,なぜこんなことができるのかと言えば,それは入力と表示の独立性によるのです.

表計算ソフトでは,表の各セルに関連するデータとして,ディスプレイに表示する「値」そのものの他に,その値の計算式や値の表示様式などもRAMに記憶しています.

表の各セルには番地が付けられています.表の各行には上から1から始まる通し番号が付けられ,各列には左から右へとAから始まるアルファベットが付されています.

セルの番地はこの列名と行番号から成ります.F5であれば,F列の上から5番目のセルという具合です.セルの値は利用者が入力しますから,セルの番地は,表計算ソフトにとっては,数式の中の「変数」のようなものです.その番地のセルの値を意味するからです.

セルに関するデータとしてRAMに記憶されている計算式は,そのセルの値を計算するために利用するセルの番地を変数にして記述されています.あるセルの値が変更された時,そのセルの番地を使う計算式を持つセルが,今変わったセルの値の影響を受けると判断できます.

 そのことに気づけば,再計算機能がなぜ実現できるのかの,あらすじを追うのはもう簡単ですね.
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ヤッキー

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